今でもはっきり憶えてる。
別れの言葉が胸につかえて、涙がこぼれたあの日。
最後まで大切に想ってくれていた、優しい彼。
「幸せでいてくれるなら、それでいいから。」
大人の恋に憧れて、選んでしまった愚かな結末。
始まらなかった彼との時間は、ただ一つ残った『恋の亡霊』。
-------------------------------------------------------------------------------------------
別れの言葉が胸につかえて、涙がこぼれたあの日。
最後まで大切に想ってくれていた、優しい彼。
魅惑的な色彩の魚たちが漂う水の街。
照りつけるアスファルトの息苦しさから解放された館内は、
穏やかで涼しげな蒼に染まっていた。
ホールをゆっくりと横切る足音までが、軽く響いている。
「この静けさが、好き。」
張りつめた独特の空気に包まれながら、心は無防備にほどけてゆく。
見慣れた友人達が笑顔で見送ってくれた午後。
微妙な距離を保ちながら歩く彼の姿を、遠い幻に感じた。
ガラス越しの風景が次第に深海を映し始める。
二人だけの異空間を共有した日。
背中から抱きしめる彼の腕に重ねたのは、指先と裸の心。
「幸せでいてくれるなら、それでいいから。」
大人の恋に憧れて、選んでしまった愚かな結末。
始まらなかった彼との時間は、ただ一つ残った『恋の亡霊』。
-------------------------------------------------------------------------------------------
スポンサーサイト
最終更新日 : -0001-11-30