始まりの予感はいつでも胸を甘く焦がす。
失ってしまう時の痛みに想いを馳せる事もなく、
ただ突然に湧き上がる、愛しさ。
長い時間をかけて、次第に近付く二人の距離。
私は秘め続けていた同じ心の闇を、彼にだけ打ち明けた。
行き場のない想いを共有したその瞬間に、欠けた心が充ちてゆく。
穏やかなその眼差しに、枯れていた心が潤い始める。
そして、静かに願う。
『これが最後の恋になりますように。』
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失ってしまう時の痛みに想いを馳せる事もなく、
ただ突然に湧き上がる、愛しさ。
始業直後の慌ただしい時間帯がようやく過ぎた頃。
「おはよう。」
頭上から降り注いだ声に驚きながら振り返る。
人の気配には全く気を配っていなかった。
身体が覚えた作業を始めると、注意力が散漫になってしまう。
「おはよう。珍しいね、こんな時間に。」
期限付きの要件を忘れていなかったか、慌ててカレンダーを確認する。
「たまには、ね。」
彼が抱えた書類の束を隣のデスクに積み上げる。
それは見慣れた風景だったけれど、いつもと違う空気を確かに、感じた。
返事を期待しないまま、独り言の様に呟いてみる。
「話すだけで気が楽になるかもよ。」
ため息と共にしばらく続いた沈黙の後で告げられたのは、
予想もしていなかった哀しい恋の結末。
長い時間をかけて、次第に近付く二人の距離。
私は秘め続けていた同じ心の闇を、彼にだけ打ち明けた。
行き場のない想いを共有したその瞬間に、欠けた心が充ちてゆく。
穏やかなその眼差しに、枯れていた心が潤い始める。
そして、静かに願う。
『これが最後の恋になりますように。』
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最終更新日 : -0001-11-30