8月1日(金) / 8月1日(金)22:30~24:05 ← 3D小説「bell」 / 【概要】 → 8月2日(土) / 8月2日(土)17:20~24:00
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今夜、バスに乗っていたのは、あの少女だけだった。
彼女はいつものように、最後尾でうつむいている。私は仕方なくその隣に座る。挨拶もしなかった。私は窓の外を眺めていた。バスが発車するまで、そうしていようと思った。
と、ふいに。
「観覧車があるでしょう?」
少女がそう言った。
私は頷く。確かに窓の外には、半月に照らされた観覧車がみえた。
「あれが、どうかしたの?」
「なくなったんだよ」
「なくなった?」
「もうずっと前に、なくなったことになったんだ」
彼女がなにを言っているのか、わからなかった。
「でも、目の前にあるじゃない」
「それはこの夢が特別だからだよ」
「現実では、あの観覧車がなくなっているの?」
少女は頷く。
「ほんの少し前まであったの。でも、ずっと前になくなったことになった。あの人がそう作り替えた」
「あの人って、センセイ?」
「貴女のところだと、そう。私のところだと、制作者って言ってる」
彼女の事情は、おおよそ聞いている。――それはもちろん、私の事情でもあるわけだけれど。簡単に納得できる話ではなかった。でも一方で、それを信じるしかない状況が、次々に生まれていることも確かだった。
少女は続ける。
「私の方で、あればなくなるから、貴女の方でもなくなったの。あの人は勝手に、貴女のところを変えちゃうんだよ」
「別に観覧車くらい、なくなってもいいけど」
「ほかにもいろいろ変わるかもしれないよ」
「たとえば?」
「わからない。けど」
少女はうつむいて、ぼそりと答える。
「あの人は嘘つきだから、きらい」
嘘つき。そうだろうか?
「私が知る限りでは、ソルはセンセイが期待した通りに動いているみたいだけど」
ソル。世界を照らす光たち。ほころび伝線する物語。虚構と現実、ふたつを繋ぐ梯子となりえる物語。2本のラインを結ぶ論理。
彼らは、この世界をダイレクトに作り替える。センセイよりも強い発言力を持ち、ある意味において、絶対的に正しい。
――彼らの協力が得られたなら。
私も、幸福になることができるだろうか?
少女をみつめて、尋ねる。
「貴女ももう、ソルを信じつつあるのではないの?」
少女は首を振る。
「本当はこの物語に、ハッピーエンドが生まれることを期待しているのではないの?」
少女はまた、首を振る。
「そんなことない」
その声は悲痛だった。殻に閉じこもり、無理に不幸な未来を信じ込もうとしているようだった。
私はできるだけ優しく、彼女に語りかける。
「嘘よ。でなければ、
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彼女はいつものように、最後尾でうつむいている。私は仕方なくその隣に座る。挨拶もしなかった。私は窓の外を眺めていた。バスが発車するまで、そうしていようと思った。
と、ふいに。
「観覧車があるでしょう?」
少女がそう言った。
私は頷く。確かに窓の外には、半月に照らされた観覧車がみえた。
「あれが、どうかしたの?」
「なくなったんだよ」
「なくなった?」
「もうずっと前に、なくなったことになったんだ」
彼女がなにを言っているのか、わからなかった。
「でも、目の前にあるじゃない」
「それはこの夢が特別だからだよ」
「現実では、あの観覧車がなくなっているの?」
少女は頷く。
「ほんの少し前まであったの。でも、ずっと前になくなったことになった。あの人がそう作り替えた」
「あの人って、センセイ?」
「貴女のところだと、そう。私のところだと、制作者って言ってる」
彼女の事情は、おおよそ聞いている。――それはもちろん、私の事情でもあるわけだけれど。簡単に納得できる話ではなかった。でも一方で、それを信じるしかない状況が、次々に生まれていることも確かだった。
少女は続ける。
「私の方で、あればなくなるから、貴女の方でもなくなったの。あの人は勝手に、貴女のところを変えちゃうんだよ」
「別に観覧車くらい、なくなってもいいけど」
「ほかにもいろいろ変わるかもしれないよ」
「たとえば?」
「わからない。けど」
少女はうつむいて、ぼそりと答える。
「あの人は嘘つきだから、きらい」
嘘つき。そうだろうか?
「私が知る限りでは、ソルはセンセイが期待した通りに動いているみたいだけど」
ソル。世界を照らす光たち。ほころび伝線する物語。虚構と現実、ふたつを繋ぐ梯子となりえる物語。2本のラインを結ぶ論理。
彼らは、この世界をダイレクトに作り替える。センセイよりも強い発言力を持ち、ある意味において、絶対的に正しい。
――彼らの協力が得られたなら。
私も、幸福になることができるだろうか?
少女をみつめて、尋ねる。
「貴女ももう、ソルを信じつつあるのではないの?」
少女は首を振る。
「本当はこの物語に、ハッピーエンドが生まれることを期待しているのではないの?」
少女はまた、首を振る。
「そんなことない」
その声は悲痛だった。殻に閉じこもり、無理に不幸な未来を信じ込もうとしているようだった。
私はできるだけ優しく、彼女に語りかける。
「嘘よ。でなければ、
リテイクの指示があったため、執筆を中断する。
主にメリーの発言内容が原因だ。納得できない、とのこと。
説得を試みるが、失敗した。
時間もページも、もう余裕がない。2巻に続く。
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最終更新日 : 2015-07-30