――水曜日のクリスマスには100の謎がある。
71番目の謎は、彼女たちはなぜ2人なのか、だ。
★久瀬へ:クリスマスパーティーのとき、久瀬くんはどうやってみさきとちえりを見分けていたのか?ちえりはクリスマスパーティーのときどうしていたか? ※8/6
85番目の謎は、なぜ彼が「主人公」なのか、だ。
★久瀬へ:君が入手できない情報は極めて不可解だ。ノイマンのPCでは表示されたHPが見つからない。特別なのは君かも。ところでみさきは例のブログに関連してメリーの指示の元、ノイマンと行動している。穏健派ファーブルと敵対する必要はないかもね ※8/6
7番目の謎は、なぜ彼は忘れたのか、だ。
★久瀬へ:12年前のクリスマスについてお父さんに聞いてみてくれないか。もし久瀬君が英雄ならドイルの話と整合しないので困っている。悪魔から受けた呪いで記憶が飛んでいると言う夢物語があるかもしれない ※8/6
★久瀬へ:今まで引越しをした遍歴を覚えてますか?曖昧ならお父さんに確認してもらうことはできますか? ※8/6
10番目の謎は、水曜日のクリスマスとはいつなのか、だ。
★久瀬へ:そういえば、初めてバスの中で少年ロケットに出会ったとき、奴は水曜日のクリスマスには100の謎があるって言っていたな。12月25日が水曜日になる年のクリスマスに何か思い当たることはないのか? ※8/6
8番目の謎は、なぜ彼の血が流れたのか、だ。
★久瀬へ:久瀬くん自身が大きな病気や怪我をしたことはありますか?また、最近病院へ行ったことがありますか? ※8/6
45番目の謎は、彼の感情の根拠はなんだ、だ。
★久瀬へ:ところで結局久瀬くんはみさきちゃんのことが好きなの? ※8/6
【再】21番目の謎は、彼らはどこにいるのか? だ。
★八千代の電話およびメールアドレスに連絡。 ※8/6
【再】58番目の謎は、彼らの世界は「いつ」なのか、だ。
★久瀬へ:
今更だけど
何で
年に1度しかあってないみさきさんを
命がけで助けるの
猫大好きスレで調べて ※8/6
【再】22番目の謎は、なぜこの物語は一部の情報が語られないのか、だ。
★久瀬へ:名簿情報間に合ったらくれ。リュミエールとかグーテンベルクとかメリーがあったら。読むだけでもよい ※8/6
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お気遣いありがとうございます。はい、私は幸弘の兄です。
久瀬くんとともに幸弘と遊んでもらっていたご友人とのことで、弟が大変お世話になっております。
ちなみにメールだと性別がわからないんですが、あなたさまは、あのとき幸弘と遊んでいた男の子と女の子、どちらでしょう......?
(いや、まぁどちらでもいいですけどね、ちょっと気になって。笑)
ちゃんとご友人であることさえ確認させていただけたら、うちの山を案内しますよ。
(あの山は確かに、私有地ですが、実家から少し離れた入り組んだ場所なので、わかりにくいですよね)
ただ、その前に、失礼なお願いなんですが、確認の意味を込めていくつか質問に答えていただいてもよろしいでしょうか?
幸弘と仲の良かった女の子についての質問なので、ご友人であれば答えられると思います。
なにせ私でも把握してるくらいの内容なので。
・幸弘と仲の良かった女の子の、髪型は?
1、ショートカット
2、ロングヘア
・幸弘と仲の良かった女の子の、好きな色は?
1、赤
2、青
・幸弘と仲の良かった女の子の、目の特徴は?
1、つり目ぎみ
2、たれ目ぎみ
・幸弘と仲の良かった女の子の、好きなスポーツは?
1、バスケ
2、テニス
・幸弘と仲の良かった女の子の、好きなお菓子は?
1、オレオ
2、ミルキー
・最後にその子の名前をフルネームで
★★★「愛媛の愛情100%」管理人よりメール:越智幸弘と親しかった友人の名前は「白石」と「山本」。


はい、幸弘は私の弟で間違いありません。
久瀬くんの記憶に問題があるとのこと、本当だとしたら、幸弘の兄としてかなり心配です。
幸弘の友人についてなのですが、名前は......そうですね、苗字くらいなら、いいかな?
弟と親しかった友人は2人いまして、「白石」と「山本」です。
ちょうど、その友人らしき方からメールをいただいております。
その人に、本当に幸弘の友人か確認するメールを送ったところなので
(やっぱりインターネットでの個人情報の扱いは難しいですからね)、
本人だとわかれば事情をお伝えして、連絡先を教えていいのか聞いてみます。
もう少々、お待ちください。
あと、弟にもメールしておきますが、たぶんいつものように返事をよこさないと思いますので、
あまり期待されない方がいいと思います。
お力になれず、すみません。
■佐倉みさき/8月7日/19時30分
夕食の時間になっても、私はまだ秋田にいるのだった。
ノイマンの、聖夜協会から頼まれている仕事が佳境とのことで、このホテルでもう一泊することになった。ニールはごねそうだなと思っていたけれど、意外にもあっさり引き下がった。
「あいつは私が苦手だから」
とノイマンはいう。
ホテルに入っている雰囲気のよいダイニングだ。私と彼女は並んで窓辺のカウンター席に座っていた。
「苦手、ですか」
「そ。プレゼントの相性でね」
「プレゼントって、あの瞬間移動のことですよね?」
「ニールのはね」
「ノイマンさんも持ってるんですか? プレゼント」
「ええ」
「どんな?」
「人を夢の世界に連れていくのよ。素敵でしょ?」
よくわからない。
「相性が悪いって、どういうことですか?」
「以前、あいつが私のところに跳んでこようとして、ひどいことになったのよ」
「ひどいことって?」
「簡単にいえば、バグったの」
やっぱりよくわからない。
でもそういえば、以前ニールがノイマンの部屋に現れたとき、あいつはわざわざ私の近くにやってきた。ニールは「ノイマンのそば」に移動することを嫌がっていたのかもしれない。
夕食は秋田の食材をふんだんに使った懐石料理で、美味しい。よい食事ばかり食べさせてくれるノイマンに、申し訳ないような気持ちになった。
私はだしに沈んだ比内鶏のつくねを箸で切り分けて口に運び、「おいしいですね」とつぶやく。
ノイマンは笑って、
「そろそろ貴女のチャーハンも食べたいけれど」
と応えた。
「美味しいでしょう、私のチャーハン」
「そうね。独特」
「それって、料理に使うとだいたい否定的な意見だと思います」
「本当に美味しいわよ。なにかよくわからない美味しさ」
コツがあるの? とノイマンに尋ねられて、「一心不乱であることです」と私は答えた。
それからしばらく、大きな窓からみえる夜景を眺めながら食事を続けていた。
と、ふいに、私の背後でとんと足音が聞こえる。
みるとそこにニールが立っていた。さすがにそろそろ、驚かなくなってきた。
「貴方のぶんの料理はないわよ」
とノイマンがいう。
「いらねぇよ。オレはこういう、一皿が出てくるのにやたら時間がかかるタイプの店は嫌いだ」
「そう。で、状況は?」
「ずいぶん静かだ。気持ち悪いくらいに」
「不思議ね」
「ああ。穏健派も強硬派も、こっちにはまるで注意を払っていない」
「メリーが誘導してるんじゃないの?」
「そうかもな。ならそうと教えてくれてもよさそうなもんだが」
「秘密主義だから。彼女」
話にまったくついていけない。
私にだかノイマンにだかは知らないけれど、「部屋にこもったまま食いすぎると太るぞ」と言い残して、ニールはまた姿をけした。
「なんの話ですか?」
と私は尋ねてみる。
ノイマンはちらりとこちらをみる。
「貴女、いま誰に誘拐されてるか、わかる?」
「ノイマンさんとニールです」
「そ。で、それはメリーの指示なわけだけど、その指示は協会には伝わってないはずなの」
「どうしてですか?」
「リュミエールからの依頼が極秘だから。一般的なスイマからみれば、急に悪魔が消えたわけだから、協会内がごたごたすると予想していたのよ。だけど意外なほど平和だって話」
「危険な可能性があったんですか? この旅行」
「もちろんよ。聖夜協会の連中には、無茶苦茶な奴がいるから」
貴女も聖夜協会の人でしょう、と言いたかったが言わないでおく。
「強硬派の人たちが、危険なんですよね?」
ノイマンは首を振る。
「そうとも限らないわよ。穏健派、強硬派は目的意識の違いでしかないから。どちらにも友人になりたくない人はいるわ」
そう単純な話でもないのか。
知れば知るほどよくわからない集団だな、と思った。
■久瀬太一/8月7日/21時
ずっとホテルにいたら息が詰まるだろう、といわれ、八千代にバーまで連れてこられた。狭い土地に無理やり建てたようなビルの2階に入っている、照明の少ないバーだった。
アルコールがあまり得意ではないオレは、ジンジャーエールを注文する。八千代はギネスビールを頼んでいた。
グラスが運ばれてきても、オレたちは乾杯をしなかった。
「いくつか、ききたいことがあるんだ」
とオレは切り出す。
「なんだろう?」
「聖夜協会のことだよ。できるだけ知っておきたい」
「オレもそれほど詳しくない」
「でもオレよりはずっと詳しい」
「ま、そうだろうね」
八千代はアーモンドをかじる。
オレは昨夜、ソルから頼まれていたことを尋ねる。
「聖夜教典って、奇妙な小冊子があるだろう?」
「ああ。君の思い出集だろ」
「あれはいつからあるものなんだ?」
八千代は首を傾げる。
「歴史のようなものは知らない。でも、そう古いものじゃない。あれを協会内で広めたのはメリーだって話だから、センセイが消えてからのことだろう」
「この10年ってところか」
「ああ。そんなもんだと思う」
まだオレが小学生だったころだ。そんなころから、知らないところで英雄だなんだと言われていたのだとしたら、薄気味の悪い話ではあった。
ふと気になって、オレは尋ねる。
「メリーって、いくつなんだ?」
「顔をみたことはないな。どうやら若い女性らしいがね」
「でも、10年前から協会内の権力者だった」
八千代は頷く。
「センセイが消えた時期は、はっきりとはわからない。聞いた話をまとめると、どうやら10年前の春ごろだったんじゃないか、という予想がたつ。そしてメリーは、センセイが消えた直後から、今と同じ地位にいた」
「どうして?」
「どうしてだと思う?」
「彼女に褒められたら、プレゼントをもらえる」
そんな風なことを、八千代が言っていた。
彼はグラスをあおって、それから頷く。
「あいつらは否定するだろうが、協会内の権力構造は、そのままプレゼントの構造だよ。プレゼントを生み出すセンセイがトップ、そのプレゼントの行き先を決めるメリーが2番手。そこに年齢は関係ない」
「どうしてメリーがプレゼントの行き先をきめるんだ?」
「それはわからない。プレゼントについての情報は、手に入れるのが厄介でね。あまり正面から尋ねられることでもない」
「協会内じゃ、プレゼントのことは常識なんじゃないか?」
「存在自体はね。でも詳細は、あまり知られていない。みんなプレゼントが欲しいんだよ。最後の最後には自分の手元にプレゼントが転がり込んでくるように仕向けたいんだ。なら自然と、そこのガードは固くなる」
ま、そうだろう。
オレは細い、スタイリッシュなグラスに注がれたジンジャーエールに口をつける。ジンジャーエールってのは、こんな飲み物だっただろうか? もっと粗暴な印象があったけれど、舌にふれた甘みは繊細だ。
「なら次の質問だ。あんた、みさきを誘拐した最初の犯人を知っているか?」
「ああ。悲しいことだか、強硬派の方に知り合いが多くてね。たしかどこかの元サラリーマンだろ。今は警察に捕まっている」
「元?」
「リストラにあったって話だ」
「なるほど。プレゼントで一発逆転を狙ったってことか」
いかにもな話だな、とオレはつぶやく。
でも八千代は首を振った。
「たしかに新人には、そういう人間もいるみたいだけどね。どちらかといえば例外だ。不思議と聖夜協会には、真っ当な仕事についている人間が多い。医者や弁護士、大手企業のプログラマー。人生でギャンブルをする必要のない人たちだ」
「成功者でも、プレゼントが欲しいものかな」
「よくわからない。聖夜協会は元々、センセイが作ったジョーク・クラブだ。そのころの繋がりと、今のプレゼントに傾倒した協会とが混じり合って、ずいぶんカオスなことになっている」
「オレの父は前者だったみたいだ」
「ああ。オレの親父もだよ」
「センセイについては?」
「よく知らない。こっちはいくら話をきいても、嘘くさくて信じる気にはなれない」
その辺りは、父親に詳しく訊いてみた方がよいだろう。
八千代はギネスビールを飲み干して、テキーラ・サンライズを注文した。オレのジンジャーエールはまだ半分ほど残っている。
脱線していた話を戻す。
「ともかく、誘拐犯の話だ。そいつがトランクを持っていた」
「へえ」
「中身は、何枚かの暗号文と、4つの鍵がかかった小箱だった」
「暗号は協会の中じゃよく使われる」
「どうして?」
「センセイの趣味だときいている。君が載っている教典もそうだけどね、今の協会じゃ、一部の個人の趣味嗜好や些細なエピソードが重大で神聖なものとして扱われている」
センセイが神聖視されるのはわかるが、どうしてオレまで絡んでくるんだ。その辺りは特に疑問だったが、オレは話を進める。
「4つの鍵がかかった小箱の方は?」
「聞き覚えはあるな。特別重要なアイテムは、そういう風に厳重に鍵をかけた箱に入れられる。鍵の開け方は、それぞれ別の聖夜協会員が知っていて、全員の合意を得られなければ開くことができない」
「中身はあの白い星だった」
八千代はぴくりと、まぶたを動かした。
「星? 食事会の入場証か?」
「ああ」
「へぇ。不思議だね。あれはそこまで重要なものじゃない。欲しがっている協会員は多いけれどね」
「じゃあ、どんなものがあの箱に入るんだ?」
「そこまではわからない。星の現物は?」
「ホテルの金庫の中にある」
「そうかい」
オレはナッツの盛り合わせの中からクルミを選んで、口の中に放り込む。
「実はひとつ、あんたのことでも知っていることがある」
八千代は運ばれてきたテキーラ・サンライズに、少しだけ口をつける。
「へぇ。なんだろう?」
「大阪で、スマートフォンとミュージック・プレイヤーを失くさなかったか?」
八千代が眉を寄せた。
「やっぱり、あれは君の仕業か」
「やっぱり?」
「あの場所はアカテから漏れた可能性が高い。そしてアカテに確保を頼んでいた、食事会の入場証は、君の仲間が持っていった」
ソル、か。
「アカテってのは、何者だ?」
「親父の友人だ。あのスマートフォンとミュージック・プレイヤー、どこにあるんだい?」
「知人が持ってるよ。スイマについて調べていたんだ」
「なるほど。スマートフォンは、協会の連絡用だよ。でもミュージックプレイヤーは関係ない」
――宮野さんもそう言っていた。
いくら調べても、スイマの手がかりはみつからない、と。
「返した方がいいか?」
「そりゃもちろん」
「本人に言っておくよ」
「ああ」
「でもあれがあんたの持ち主だって、証明する方法が必要だ」
八千代は笑う。
「詳細に中身を語って聞かせろっていうのかい?」
言い当てられて、オレは口ごもる。よい誘導だと思ったのだが。
八千代は肩をすくめた。
「あんまりよく覚えてないな。昔から持っている、ただの私物なんだ」
「どうしてそんなもん持ち歩いてたんだ?」
大阪のアパート、は八千代の部屋ではないはずだ。
八千代はテキーラ・サンライズに口をつける。
それから、オレの質問には答えずに、言った。
「ま、どっちもそれほど重要なもんじゃない。そのうちに気が向いたら返してもらいにいくと伝えておいてくれ」
それはふだんの彼のイメージには合わない、疲れた風な口調だった。
■久瀬太一/8月7日/22時
「意外とやるじゃない」
と宮野さんは言った。
「つまりあんた、スイマの知り合いができたってことでしょ」
ホテルに帰ってきたオレは、「スマートフォンとミュージックプレイヤーの持ち主に会った」と電話で彼女に報告したのだ。
宮野さんは嬉しげに続ける。
「どこをほっつき歩いてるのかと思ったら、時間外も調査を続けていたわけね。ちょっとじーんときたわ。意外とうちの雑誌、気に入ってるの?」
感動しているところ悪いけれど、残念ながら貴女のところの雑誌のことなんかもう忘れていた。
「ともかく活躍したわけですから、約束を守ってください」
彼女の記事に貢献できたら、ミュージックプレイヤーの中身の書き起こしがもらえることになっている。
「まだよ。なにか記事になる情報を引き出してきなさい」
正直、スイマのことも聖夜協会のことも、ベートーヴェンの記事にはよく似合うように思った。けれどこれらの情報は、慎重に取り扱った方がよいだろう。
「というか、その人紹介してよ」
と宮野さんは言う。
――どうしたものかな。
宮野さんと八千代を会わせていいものだろうか?
あまり宮野さんをこの件には深入りさせたくなかった。とはいえ彼女が調査を続けている以上、必ずしも放っておいた方がよいというわけでもないだろう。一方でオレたちは、意図的に聖夜協会から狙われる立場になったわけだから、やはりあまり彼女には会いたくない。
「電話でいいですか?」
「どっちかといえば、直接会った方がいいわね。謝罪の菓子折り持っていくし。写真も撮りたいし」
「写真?」
「雑誌の記事用よ。記者がとらえた決定的瞬間! これがスイマの全貌か!? みたいな」
扱いが未確認生物だ。
「謝罪とそれをまとめて処理しないでください」
「私はプライベートと仕事を切り離して考えられるタイプのまっとうな社会人なのよ」
「アパートに忍び込んで窃盗を働いたのも仕事でしょう」
「それを仕事だって言い張ったら詐欺も強盗も仕事になるわよ」
自覚あったのか。
いまだにこの人の常識の持ち方がよくわからない。
「美女がディナーをおごるって言ってるって、伝えといて」
と呑気に宮野さんは言う。
「伝えるだけは、伝えておきますよ」
「イタリアンとつけ麺、どっちがいいと思う?」
「どっちでもいいですが、あのつけ麺屋では落ち着いた話はできないでしょう」
オレは小さなため息を漏らしてから、尋ねた。
「顔を合わせられるようにセッティングしたら、ミュージックプレイヤーの中身の書き起こしをもらえますか?」
宮野さんはしばらく沈黙して、それから珍しくシリアスな口調で言った。
「それは本人から許可をとった方がいいと思う。本当に、かなり個人的な感じの内容だったから」
たしか、ミュージックプレイヤーの中身は、女の子から男の子へのメッセージだと言っていた。
「持ち主宛てのラブレターみたいなものですか?」
とオレはきいてみる。
宮野さんはまた沈黙して、それから答えた。
「だいたい、そんな感じね」
本当かよ。
中身がかつての八千代に宛てられた告白だとしたら、オレもあまり聞きたくはない。
「なんかこのミュージックプレイヤーを、クリスマスプレゼントに贈ります、っていう内容よ」
じゃあセッティング頼んだわよ、と言い残して、宮野さんは電話を切った。
――クリスマス。
そのワードには、どうしてもひっかかる。
※
ベッドに寝転がって、オレは考える。
――八千代と宮野さんを合わせるか?
抵抗があった。
やはり、今、オレたちを見張っているはずのスイマたちが気になる。
そのことで悩んでいると、またスマートフォンが鳴った。
知らない番号。応答する。
妙に芝居がかった、男の声がきこえた。
「夜分遅くにすみませんねぇ、久瀬さん」
ファーブル。どうして、この番号を知っている?
わからなかったが、調べればわかるものなのだろう。いちいち驚いてはいられない。
「なんだ?」
とオレは尋ねる。
「お食事にお誘いしたお返事を、そろそろいただきたいなと思いまして」
「ドイルの秘密ってのはなんだ?」
「お会いできたら、お教えいたしますよ」
まあいい。こいつには会うと決めている。
「わかった。明日にしよう」
とオレは答えた。
――To be continued
【3D小説『bell』運営より】
ゲーム実況プレイヤー「いい大人達」様がニコニコ動画に『シロクロサーガ』の実況動画をアップして下さいましたっ!
前フリ:http://www.nicovideo.jp/watch/sm24182922
本編:http://www.nicovideo.jp/watch/sm24182844
「いい大人達」様の動画は公式から正式にお願いしたものです。
大まかな企画意図を説明しただけで、「あとはお任せいたします」という形になっております。
運営から謎やヒントを仕込むお願いはしておりません。
ゲームデータも皆さまの手元にあるのと同じ、不完全なものです。
8月6日(水) ← 3D小説「bell」 → 8月8日(金)
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最終更新日 : 2015-07-30