(・・・・は。)
声が、聞こえた。
(・・・ちは!)
遠いようで近い距離。
焦点が、合わない。
(・・・やったね!)
それは何故か、懐かしい響き。
大樹の影で心地よくうたた寝していた、はずだったのに。
気付けば殺人的な陽光に焦がされていた。
頭が割れそうに、痛む。
強い陽射しに目を細め、ぼんやりと遠景を眺めた。
日曜だというのに、サラリーマンが汗を拭いながら木陰で涼んでいる。
その傍らを、子供たちがはしゃぎながら通り過ぎて行った。
穏やかな笑顔でその背中を見送る彼の脳裏に蘇ったのは、どんな記憶だろうか。
(それにしても、あの声。)
夢現(ゆめうつつ)に聞いた声の主を求めて、周囲を確かめる。
覗き込むように見ていた、心配そうな表情。
輪郭がぼやけて、どうにもはっきりとは思い出せそうにない。
(・・・!)
不意に、視界の端を横切る異質な気配を感じた。
怪しい影を捉えようと、慌てて視線を走らせたけれど。
公園の時計が、訝しげにこちらを伺っているだけだった。
ため息を、ひとつ。
曖昧な記憶を頼りに、彼女のモンタージュを試みる。
結局は、足りないパーツがあまりにも多過ぎて諦めるしかなかった。
それでも。
射抜くようなあの力強い瞳だけは、覚えてる。
2012年5月20日(日)
彼女と出逢った、はじまりの日。
使い古された言い方かもしれないけど。
ひと目で、惹かれてしまったんだ。
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最終更新日 : 2015-11-01