思わず、目を疑う。
(まさか、そんなコトって。)
確かに、全てが消し去られていた。
派手なネオンもウサギもまるで、初めから存在しなかったかのように。

数日前まで存在していたはずの「$Bar Million$」。
朱/vermilion【$Bar Million$】の物語は、深い闇の中へ。
(一体、どうして?なぜ、こんな事に。)
考え事をしようとしても全くはかどらない。
慎重に積み上げて来たはずの何か、が脆く崩れ去る。
動揺しているその理由すらも、解らないままに。
--- この闇を覗き続けていたら、いつか自分も・・・? ---
知らぬ間に響き始めた【Noise】から逃れるように、目を逸らす。
(そうだ。誰かの報告書があった、はず。)
2012年1月18日(水)
$Bar Million$の内部にて新たな画像を発見。
画像には文字が重ねられていた。Лишние слова надо истреблять, как вошь.
訳:不要な単語がシラミのように根絶されるべきである。
画像をクリックするとロシア語のサイトへ誘導。http://www.epwr.ru/quotation/txt_516_13.php
その後、突如として画像および内部資料が消失。
現在残されているのは、以下の文言のみ。
Wenn du lange in einen Abgrund blickst,
blickt der Abgrund auch in dich hinein.
訳:おまえが長く深淵を覗くならば、
深淵もまた等しくおまえを見返すのだ。
以上
とにかく作業に集中しよう、と決めた。
まずは補足事項の追記。資料を引っ張り出す。
- 肖像画の作者/イリヤ・レーピン -
・画像の出典元:イリヤ・レーピン作『マキシム・ゴーリキーの肖像』
http://ja.wahooart.com/a55a04/w.nsf/OPRA/BRUE-5ZKCSG
・wiki「イリヤ・レーピン」
・「賢者の石ころ」より記事「徒然にロシアのレンブラントと称された『イリヤ・レーピン』」
- 肖像画のモデル/マクシム・ゴーリキー -
・wiki「マクシム・ゴーリキー」
・wiki「Maxim Gorky」
・「ロシア文学」より記事「ゴーリキー、マキシーム」
- 画像に重ねられた言葉/マクシム・ゴーリキーの名言 -
Лишние слова надо истреблять, как вошь.
訳:不要な単語がシラミのように根絶されるべきである。
画像に重ねられたのは、肖像画のモデル「マクシム・ゴーリキー」による名言らしい。
- 残された文言/フリードリヒ・ニーチェの名言 -
Wenn du lange in einen Abgrund blickst,blickt der Abgrund auch in dich hinein.
訳:おまえが長く深淵を覗くならば、深淵もまた等しくおまえを見返すのだ。
「善悪の彼岸」146節より
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・wiki「フリードリヒ・ニーチェ」より
・wiki「善悪の彼岸」
肖像画には見慣れぬ記号の列。
そして、最後に残された言葉はおそらく「誰か」に宛てたメッセージ。
(消えてしまった謎の影、か。)
この世界の片隅で、何かが動き始めている。それは紛れもない真実だろう。
Wer mit Ungeheuern kampft mag zusehn dass er nicht dabei zum Ungeheuer wird.
(怪物と闘う者は、その過程で自らが怪物と化さぬよう心せよ。)
綴られなかった一節が、脳裏から離れない。
もしかしたら。
ピエロの友人もまた【BUBBLEGUM】に抗うべくその身を内部に置くうちに
自らを「忌むべき怪物」へと変化させられてしまったひとり、なのかもしれない。
--- この闇を覗き続けていたら、いつかアナタも・・・。 ---
ねえ。誰かあの不気味に響く【Noise】を、止めて。
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最終更新日 : -0001-11-30